病名 恋煩い

いらなくなって捨てた傘

似た物同士

「いや~、まさか一緒に勇気を出してみよって励まし合ってたのに、2人共振られることになるなんてね」

 

安っぽい居酒屋で安っぽい酒を飲む。

別に最初から僕は君が好きなんだけどな。

どうしてもこっちを向いてくれないから、適当に顔が似てる子を代わりにしてただけ。

 

なんなら、最初から僕は振られてるし。

別に君以外はどうでもよかった

 

「寂しい?寂しいよね~ほんとわかる。どうせなら私達で付き合っちゃう?同時に振られるなんて運命だよ」

 

「本気かよ、まぁお前みたいな美人なら別にいいけどな」

 

声はもちろん震えてる。 

夢か夢を見てるのか?

 

「、、、ほんとに言ってる?」

 

落ち着こうと酒を呷る

大丈夫 大丈夫 大丈

 

「じゃあさ、明日このブランドのこの服を来てこのホテルきてよ」

 

「なんだよそのこだわり、まぁいいけど」

 

細かいことはいいか、とにかくさっさと服を買ってこないとな。

 

 

 

 

 


「やっほ~ごめんね、仕事終わりに楽しみにしてた?なんてね」

 

無邪気に笑う、あぁこの顔を好きになったんだけな。

 

「ちょっと準備してもいい?」

「なんだよ、その荷物仮装大会でもするのか?」

 

なんて言いながら、鞄から色んな物を取り出す。

眼鏡 香水 アクセサリー。

どれも全部見たことがある。

 

「よしっ、これで同じ」

 

髪型を最後に整えられて。

これじゃまるで。

 

「あ、気づいた?見た目はほとんど同じなのに

 なんで私は君じゃダメだったんだろうね?こんなに愛してくれるのに」

 

静まりかえった薄暗い部屋の中で

 

「なんで君はあの子じゃダメだったんだろうね?

こんなに私と顔も背丈も似てて愛されてるのに」

 

彼女の声だけが響く。

 

「どうして私達ダメだったんですかね」 

「今夜だけは私を見てて下さいね」

「お願いしますね、先輩」

 

あんなに近かった声が。

どんどん遠くから聞こえる。