病名 恋煩い

いらなくなって捨てた傘

まぁ、僕には関係ないけど。

ネットで知り合って、恋仲になるなんて馬鹿馬鹿しい。そう斜に構えている時期があった。


小さい頃なんて、誰が好きかとか言うのは妙に気恥ずかしさがあった。


だからこその照れ隠しだったのかもしれない。


毎日、なんでもない事を話していた。

バイト終わり、下校時間

その時間が楽しみだった、この関係を壊したくなくて中々想いを伝えるのが怖かった。


彼女はよく彼氏の愚痴を言っていた。

どんな人とも上手くいかないようで。

その度に君となら上手く行く気がするなんて言ってたっけ?

私は恥ずかしくて毎回、ネットから始める恋愛ってどうなのなんて笑って誤魔化してた。

 

些細な事で、喧嘩をした。

もう内容は忘れてしまったけど、本当に小さい事だった。

 

 

 

 


偶然また知り合えた。

喧嘩した理由はお互い覚えていなかった。

相変わらず彼氏と喧嘩をしているみたいだった。


久しぶりに通話をしても、

まるで昨日話したばっかりみたいで、

なにも変わってなくて安心した。


それでさ〜彼氏がさ

なんて話題もいつも通り出てきた。


「それだけ、愚痴が出るなら私にしとく?」


やっと、やっとこの言葉を伝えるには

時間がかかりすぎたそうで。

遅すぎだよ、私もう結婚するんだよ。

距離は近くなったのに声は遠くなっていた。

 


ちなみに、君のこと今でも好きだよ。

どうする?

 


えっと、なんだっけ。

聞こえなかったや。


まぁ、僕にはもう関係ないけど。

まぁ、僕には関係ないけど。

君さ本当にいつも女運ないよね笑

僕もだけど。

 


お互い振られる度に慰め合う関係だった。

付き合っては別れを繰り返して


お互いに今回は〜なんて話していた。

お互いに嫌いなとこがたくさんあった


その度にこう言うところがなんて

子供みたいにTwitterに書き込んだ

大体、私が折れて先に謝っていた

 


唯一本音で話せる人だった。

 


私は自分の声が嫌いだった

私は自分の笑い方が嫌いだった

私は自分の性格が嫌いだった


私の嫌いなとこを好きだと言ってくれた。

貴方が居る夜が少しだけ好きになれた。

 


初めて人と会うためだけに旅行をした。

待ち合わせに1時間も早くついてしまって、

来るの早すぎじゃない?なんて息を切らしながら

初めて会って交わした会話だった。


カフェ、雑貨屋、古着屋

色んなとこを2人で歩いた。

 


最後に

好きだと伝えたけど

君は困ったように笑うだけだった


貴方には好きな人がいて

貴方曰く、君には幸せになって欲しいんだよ

私以外とね。らしい


私は貴方以外と幸せになれないのに

 


翌日、私の声が聞きたいと。

タバコを吸う間だけ話そうよなんて言われて

通話をかけた。


横には誰かいるらしい、

やっと幸せになれたのかななんて

思ったけど、どうやら本命じゃないらしい。


私を選んだらよかったのかなって

聞こえた気がしたけど

多分気のせいだろう。

 


私への嫌味や軽口で埋まっていたTwitterは、

今は彼氏との惚気話で埋まっている。

 


自分の声が嫌いになった

褒めてくれる人がいないから。

気がつくと笑えなくなっていた

何をしても楽しくない。

貴方を醜く追い求める

自分の性格がきらいだ。


何度待っても貴方から通知が来ない

何度も何度も夢に見た

夜は嫌いだ寝ると思い出すから。


人を待つのを辞めた。


まぁ、僕には関係ないけど。

まぁ、僕には関係ないけど

初めて恋をしたらしい。

サッカーが好きで、クラブチームの大会で知り合った。

 


彼女は、ボランティアで来ていたらしい。

大会の休憩時間で偶然見かけて自分から話しかけた。


あの、ここ関係者しか入れないですよ?


え、ここ関係者しかダメなの?

ん〜お願い内緒にして。私タバコ吸えないと持たないの。


悪びれもなく笑う人だった。

銘柄は覚えてないけど、甘ったるい匂いと

紺色のパッケージに、金色のロゴが入ってた。

 


毎回休憩時間に話すのが楽しみになっていた。

自分がゴールを決めると、誰よりも誉めてくれた。

 


本当に色んなことを話した。

 


年は5つ離れていた

彼氏がいるらしい。

彼氏が暴力を振るうらしい。

美容師を目指しているらしい。

 


なんでいつも長袖なの、

サッカーしてたら、暑くない?

と聞かれたので、腕の傷の事を話したら、私とお揃いだね。

なんて辛そうに笑っていた。

 


君は私みたいな人好きになっちゃダメだよ

なんて言われても、もう遅いんじゃない?

 


大会の日、今日最後なんですよ。

だから、夜ご飯でもどうですか?なんて誘ってみた。

 


今日、記念日なんだよね、、、

彼氏とちょっと話をした後になるから遅くなるかもだけどそれでもいい?

10分で終わらせるから、との事らしい

 


でも、待っていても。

待ち合わせに貴方は来ることはなかった。

 


LINEのスタンプはどうやら全部購入済みだったらしい。

 

数年後インスタで結婚式のストーリーをあげていた。腕の傷は増えていた。

 

初めて吸うタバコは苦かった。

いつかまた喫煙所で出会える気がして

辞めることができなかった。

 

僕は人に期待するのをやめた。

まぁ、僕には関係ないけどね。

貴方へ向けて

もう二度と会えない人が増えていく。

それも、二十代になってから。

 

後になってから気づく、その繰り返し。  

最後は呆気ないものだったりする。

 

またねと言った後とか

あの時した約束とか

これで会うのは最後と尋ねた後とか

既読がつかないままのメッセージとか。

 

他にはちょっとした失恋でそうなったりする。

失恋とさえ呼べない何かでそうなったりもする。

 

彼らはもう二度と喋ることは出来ない。

そして私もやがて彼らに語りたかった言葉を忘れてしまうでしょう。

 

彼は白いキャスターを吸っていた。

私と同じ甘党だった。

アクセサリーが派手でいつもキラキラしていた。

shiroの香水を愛用していた。

忙しいと肌が荒れることに悩んでいた。

 

金髪が良く似合う人だった。

好きな事なら寝ずに行動する人だった。

自分の夢を叶えるために頑張れる人だった。

激務でも仕事の愚痴は言わない人だった。

たまに弱音を吐いてもすぐ謝る人だった。

 

私は唯一彼のその癖が嫌いだった。

 

出会いは飲み会だった。

2回目は私から会いたいと声を掛けた。

 

待ち合わせに遅れて来たのは予想通り。

笑顔が可愛い 話すと面白い 寝顔が綺麗

 

だけど彼は消えた。ツイッターもインスタも、彼のアカウントは予告なく消えた。

LINEも電話も繋がらず、家を訪ねた。引っ越していた。本名で検索しても、彼は行方知れずだった。

 

なにが原因だったのかは、分からない。  

でもそんな日が来る予感は、なんとなくしていた。

 

彼は結局そういう人で、彼にとっての私も結局それだけだった。

そう自分に言い聞かせては

もう何千何万回と彼との記憶の処理に失敗した。

 

貴方と話した内容が。

貴方と交わした約束が。

貴方の匂いが。

私の中から消えてくれない。

 

死別と離別、どちらがつらいのか。

私は未だによく分からない。

 

どこかできっと生きているのに

もう会える望みは薄い。

その方がつらいのか。

 

もう二度と会えないことが

確定している方がつらいのか。

私は未だによく分からない。  

 

でも私はこの生傷を治す気がない。

包帯は巻かないし。

傷薬は塗らないし。

瘡蓋は剥がすし。

病院だって行ってやらない。

絆創膏を貼るのも諦めた。

 

もう二度と会えない貴方への

ほんのささやかな復讐として私は届かない手紙を書き続けようと思う。

 

貴方へ向けて

メッセージを送り続けようと思う。 

 

どうしてあなたがあの日いなくなったのか分からない。

 

しかし私はいまここにいて

あなたの存在を寸分も美化せず

寸分も劣化させることもなく生きている。

 

あなたがどこかで生きていてくれればいいなと思いながら。

 

そして、あなたは私が残した記録ををいつか偶然目にすればいい。

そして、なんとなく苦しくなればいい。

そして、あの日をちょっと思い出せばいい。

 

なんとなくで放棄したあの関係を、

私は待っています。

 

決してあなたのためなんかではなく、ただひたすら私の救われない魂のために。

 

私にとっての仕事とは、そういうものだ。

私は貴方のことを忘れないでしょう。

 

 

これらをみて思い出して欲しい。

暇が愛を煮詰せるのです

全ての女はメンヘラである。

 

メンヘラ女子の大好物は

愛されている実感である

 

その物差しは何を得たかよりも

何を失ってきたかである

 

最も分かりやすいものが時間である。

休日の自由な時間をどれだけ失ったか

友人達との時間を自分に使ってくれたかである。

 

可能ならお金や体力も

人の欲望は無限である

メンヘラの敵は時間である

 

愛とは暇を煮詰まらせたものです。

泣いた赤鬼

一目惚れだった。

理由はちっぽけで

笑顔が素敵だった。

 

ただ、それだけだった

ただ、それが叶わぬ恋だと知っていた

 

僕と貴方では種族が違うから。

鬼がどんなイメージを持たれているか知っていたから。

 

でも、どうしても

1回でもいいから話をしてみたかった。

 

その事を親友の、青鬼に話しました。

 

「おぉ、そりゃあいいじゃないか。よし親友のために人肌脱いでやるかいいか?」

 

話した理由はこうでした。


青鬼が人間の村へ出かけて大暴れをする。

そこへ赤鬼が出てきて、青鬼をこらしめる。


そうすれば、人間たちにも、赤鬼がやさしい鬼だということがわかるだろう、と言うのでした。


しかし、それでは青鬼にすまない。

としぶる赤鬼を青鬼は

無理やり引っ張って
村へ出かけて行きました。

 

結論から言うと

計画は成功しました。

 

毎日、毎日

赤鬼の家には、1人2人と尋ねる人が増えていき。

 

あの子とも、夢だった会話も2人で遊びに出かけることもできて、毎日が幸せでした。

 

本当に幸せでした。

青鬼が姿を見せなくなったこと以外は

 

 

 

数年がたち

鬼が怖いというイメージは赤鬼のお陰で

いつの間にかすっかりと無くなっていました。

 

 

いつも通り家に帰ると

見かけなくなった青鬼が手を広げ

「よぉ!親友久しぶりだな」

とやけに、満足した顔でそこに居ました

 

それから、色んな事を話した

 

青鬼が他の鬼と出会った話や

あの子と付き合えて毎日が幸せだったこと

どうしても青鬼に謝りたかったという事。

 

何時間も

いつもの時間にあの子が来ないという事も忘れ

 

「いやいや、気にするなよ」

「ご馳走にありつけたしな、最近お前のお陰でどいつもこいつも警戒心が無くてよ」

 

そこでようやく、気づきました。

 

「あ?おいおいそんなに、獲物を横取りしたのを怒ってんのか?左腕は残ってるからゆるしてくれよ」

 

ほらよと言われ渡されたのは

やけに見覚えがあるものだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

1番目になれなくても

貴方の1番目になりたかった

1番目を取らなければ2番目には意味が無い

 

なんて言葉をよく耳にします

2番目は実はどこにでもある

 

2番目に好きな場所

2番目に印象に残ってること

2番目に忘れたいこと

2番目に好きになった人

 

1番になりたかった

1番目になりたかったけれど

それは無かったことにされど無くなることは無い

ずっと生きているのです。

 

1番目にならなかったことで2番目の風当たりは強くない

そんなメリットもあったりする

 

私達はそんな2番目を泣きながら集めてみてもいいのでは無いのでしょうか。

いつかきっとそれらは1番目を取る手助けをしてくれるでしょう。

 

 

 

 

ちなみにこれまでの文章はあなたが2番目になれる可能性がある場合のみですが