病名 恋煩い

いらなくなって捨てた傘

まぁ、僕には関係ないけど

初めて恋をしたらしい。

サッカーが好きで、クラブチームの大会で知り合った。

 


彼女は、ボランティアで来ていたらしい。

大会の休憩時間で偶然見かけて自分から話しかけた。


あの、ここ関係者しか入れないですよ?


え、ここ関係者しかダメなの?

ん〜お願い内緒にして。私タバコ吸えないと持たないの。


悪びれもなく笑う人だった。

銘柄は覚えてないけど、甘ったるい匂いと

紺色のパッケージに、金色のロゴが入ってた。

 


毎回休憩時間に話すのが楽しみになっていた。

自分がゴールを決めると、誰よりも誉めてくれた。

 


本当に色んなことを話した。

 


年は5つ離れていた

彼氏がいるらしい。

彼氏が暴力を振るうらしい。

美容師を目指しているらしい。

 


なんでいつも長袖なの、

サッカーしてたら、暑くない?

と聞かれたので、腕の傷の事を話したら、私とお揃いだね。

なんて辛そうに笑っていた。

 


君は私みたいな人好きになっちゃダメだよ

なんて言われても、もう遅いんじゃない?

 


大会の日、今日最後なんですよ。

だから、夜ご飯でもどうですか?なんて誘ってみた。

 


今日、記念日なんだよね、、、

彼氏とちょっと話をした後になるから遅くなるかもだけどそれでもいい?

10分で終わらせるから、との事らしい

 


でも、待っていても。

待ち合わせに貴方は来ることはなかった。

 


LINEのスタンプはどうやら全部購入済みだったらしい。

 

数年後インスタで結婚式のストーリーをあげていた。腕の傷は増えていた。

 

初めて吸うタバコは苦かった。

いつかまた喫煙所で出会える気がして

辞めることができなかった。

 

僕は人に期待するのをやめた。

まぁ、僕には関係ないけどね。