病名 恋煩い

いらなくなって捨てた傘

泣いた赤鬼

一目惚れだった。

理由はちっぽけで

笑顔が素敵だった。

 

ただ、それだけだった

ただ、それが叶わぬ恋だと知っていた

 

僕と貴方では種族が違うから。

鬼がどんなイメージを持たれているか知っていたから。

 

でも、どうしても

1回でもいいから話をしてみたかった。

 

その事を親友の、青鬼に話しました。

 

「おぉ、そりゃあいいじゃないか。よし親友のために人肌脱いでやるかいいか?」

 

話した理由はこうでした。


青鬼が人間の村へ出かけて大暴れをする。

そこへ赤鬼が出てきて、青鬼をこらしめる。


そうすれば、人間たちにも、赤鬼がやさしい鬼だということがわかるだろう、と言うのでした。


しかし、それでは青鬼にすまない。

としぶる赤鬼を青鬼は

無理やり引っ張って
村へ出かけて行きました。

 

結論から言うと

計画は成功しました。

 

毎日、毎日

赤鬼の家には、1人2人と尋ねる人が増えていき。

 

あの子とも、夢だった会話も2人で遊びに出かけることもできて、毎日が幸せでした。

 

本当に幸せでした。

青鬼が姿を見せなくなったこと以外は

 

 

 

数年がたち

鬼が怖いというイメージは赤鬼のお陰で

いつの間にかすっかりと無くなっていました。

 

 

いつも通り家に帰ると

見かけなくなった青鬼が手を広げ

「よぉ!親友久しぶりだな」

とやけに、満足した顔でそこに居ました

 

それから、色んな事を話した

 

青鬼が他の鬼と出会った話や

あの子と付き合えて毎日が幸せだったこと

どうしても青鬼に謝りたかったという事。

 

何時間も

いつもの時間にあの子が来ないという事も忘れ

 

「いやいや、気にするなよ」

「ご馳走にありつけたしな、最近お前のお陰でどいつもこいつも警戒心が無くてよ」

 

そこでようやく、気づきました。

 

「あ?おいおいそんなに、獲物を横取りしたのを怒ってんのか?左腕は残ってるからゆるしてくれよ」

 

ほらよと言われ渡されたのは

やけに見覚えがあるものだった。