私は口紅が嫌いだ。
貴方から口紅を貰った。
「僕と会う時だけつけてね」
との事らしい。
日に日に減っていくのが楽しみだった。
自分では買わない様な色だったので、どんな服と合うのか試行錯誤する時間が好きだった。
好きだった。
だけど今はもうつけることが無くなってしまった。
貴方がいなくなったから。
街で同じ物を見かける度、貴方のことを思い出す。
あの時の自分が記憶が鮮明に蘇って胸が痛くなる。
だから私は口紅が嫌いだ。
未練がましくそこに居座る感情も物も
全部全部嫌いだ。